2010年12月31日金曜日

S8101_教育原論1

~使用教材~

『教育学の基礎』



~リポート作成の際に注意した点~





~S8101_教育原論1_リポート作成例(評点:A)~

ハヴィガーストの発達課題について述べよ。


1.発達課題とは
発達課題とは、人間の生涯の各段階における達成すべき課題を意味する。ハヴィガーストは、生涯の発達課題について次のように述べている。「個人が学ばなければならないもろもろの課題、すなわち生涯の発達課題は、われわれの社会において健全な成長をもたらすものである。発達課題は、個人の生涯にめぐりいろいろの時期に生ずるもので、その課題を立派に成就すれば個人は幸福になり、その後の課題も成功するが、失敗すれば個人は不幸になり、社会で認められず、その後の課題の達成も困難になってくる。」
すなわち、発達課題という考えは、生涯の各段階において生じる課題を系統化するものである。したがって、教育学的観点からも、教育目標の設定を助け、その時期を示すことは有益である。
ハヴィガーストは、この発達課題を「幼児期」「児童期」「青年期」「壮年期」「老年期」に分けて考えている。以下では、ハヴィガーストによるこれらの各段階における発達課題を考察する。

2.生涯の各段階における発達課題
~幼児期~
幼児期のおける発達課題として、次が挙げられている。
・歩行の学習
・固形の食物をとることの学習
・話すことの学習
・排泄の仕方を学ぶこと
・性の相違を知り、性に対する慎みを学ぶこと
・生理的安定を得ること
・社会や事物についての単純な概念を形成すること
・両親や兄弟姉妹や他人と情緒的に結びつくこと
・善悪を区別することの学習と良心を発達させること
特にハヴィガーストは、母親の役割を重視している。ただし、ここでの母親とは、幼児を愛情で包み幼児が信頼しうる人物という意味で、必ずしも実母である必要はない。母親は幼児と接する中で、物事の善悪や社会の持つ文化について、その知るところを伝えることが要求される。

~児童期~
児童期における発達課題として、次が挙げられている。
・普通の遊戯に必要な身体的技能の学習
・成長する生活体としての自己に対する健全な態度の養成
・友達と仲良くすること
・男子または女子としての社会的役割を学ぶこと
・読み、書き、計算の基礎的能力を発達させること
・日常生活に必要な概念を発達させること
・良心、道徳性、価値判断の尺度を発達させること
・人格の独立性を達成すること
・社会的集団ならびに諸機関に対する態度を発達させること
児童期は、活動の場が家庭から学校へ移ったことが特徴的である。学校は発達課題を達成するために社会が用意した過程であり、ゆえに学校は上に挙げた発達課題を達成する役割に責任を持たなければならない。

~青年期~
青年期における発達課題として、次が挙げられている。
・同年齢の男女両性との洗練された新しい関係
・自分の身体の構造を理解し、身体を有効に使うこと
・両親や他の大人から情緒的に独立すること
・経済的な独立について自信を持つこと
・職業を選択し準備すること
・結婚と家庭生活の準備をすること
・市民として必要な知的と態度を発達させること
・社会的に責任のある行動を求め、かつ成し遂げること
・行動の指針としての価値や論理の体系の学習、適切な科学的世界像と調和した良心的価値の確立
青年期の子供が正しく成長するためには学校の役割が大きい。そこで、ハヴィガーストは学校教育で留意すべき点を次のように指摘している。
・各児童が発達課題のどの段階にいるのかを把握していること
・児童の援助のために、父兄、教会、その他施設との連携をとり、明確な教育方針を示していること
・連携する地域社会の施設について長所と短所を把握していること
・教師や学校職員が、児童との接触を通じて模範を示し、良い影響を与えていること
・発達課題の遂行に関して、反省的思考を明確かつ系統的に考えていること

~壮年期~
壮年期における発達課題として、次が挙げられている。
・配偶者の選択
・結婚相手との生活の学習
・家庭生活の出発(第一子をもうけること)
・子どもの養育
・家庭の管理
・職業に就くこと
・市民的責任の負担(家庭外の社会集団の福祉のために責任を負うこと)
・適切な社会集団の発見

~中年期~
中年期における発達課題として、次が挙げられている。
・大人としての市民的社会的責任の達成
・一定の経済的生活水準の確立と維持
・十代の子どもたちが、信頼できる幸福な大人になれるよう援助すること
・大人の余暇活動を充実すること
・自分と自分の配偶者をひとりの人間として結びつけること
・中年期の生理的変化を理解し、これに適応すること
・老年の両親への適応

~老年期~
老年期における発達課題として、次が挙げられている。
・肉体的な強さと健康の衰退に適応すること
・隠退と減少した収入に適応すること
・配偶者の死に適応すること
・自分と同年輩の老人たちと明るい親密な関係を確立すること
・肉体的生活を満足におくれるよう準備態勢を確立すること

3.まとめ
発達課題は、生涯の各段階において個人の欲求と社会の要請との間に生ずるものである。したがって、発達課題という考え方は、個人を社会に適応させるための教育的問題を捉える上で有用な概念である。


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